「ちがうよ。胸ならもっと柔らかいから!」
わたしもまたとてつもなくヘンなことを答えてる。
なんの見栄だ、これ。
「…………」
わ、棒立ちになった彼の顔が赤くなった。
「ゴ、ゴメン! 何言ってんだろ、わたし」
真面目にコーチしてくれてるのに、チカン扱いしてしまうなんて、失礼過ぎる。
「まぁ、姿勢については考えすぎると体が動かなくなるし、自然体で行こう」
「う……ん」
「考えたって、どうせ本番になったら全部吹っ飛んじゃうし、もうずいぶん速くなってるから大丈夫だよ」
「うん」
加島くんは何ごともなかったように接してくれた。
こうして、どう走ったらいいのかまとめてくれてるのは、もうすぐ2人だけの朝練が終わるから。
あさってからは他のメンバーも加わってバトントスの練習をすることになっていた。



