キミの風を感じて


翌朝、練習のとき――。


昨日ユメちゃんがヘンなことを言うもんだから、何だかそわそわしてしょうがなかった。


キライじゃないかもしれない加島くんのことを妙に意識してしまう。




「今日は前傾姿勢の練習からな」


黒い瞳で真っ直ぐに見られるだけで、心の中がドキンッと跳ねた。




“走り出してしばらくは姿勢を低くしてスピードをあげていき、だんだんと体を起こして力強く走り抜ける”


この前から練習してるけど、それがわたしにはうまくできない。


前傾と言われるだけで、腰を曲げて走るおばあさんみたいになっちゃうんだ。


だけど加島くんはもう笑わないでいてくれる。




「筋力もいるし、無理に意識しないほうがいいかもな」


そう言いながら真横に立ち、彼はわたしの背中に片手を当てた。