「え、いや、見てない、見てない」
「彼、いつも陸上の本読んでるの? そんなことわたし知らないし」とユメちゃん。
「知らない。わたしも知らないよ。今偶然見ただけ」
「うそばっか」
あわてて否定するわたしの顔をユメちゃんがにんまりとのぞき込む。
「スモモ興味あるんだよね? 彼のこと」
「ないない。全然ない!」
全力で首を横に振ったら、ユメちゃんは机に突っ伏して笑い出した。
「顔真っ赤だよ、スモモ。わかりやすすぎ」
え―――っ?
そうなの?
そーゆーことなの?
いやいや、絶対にあり得ない。だってわたしキライだったもん、加島くんのこと。
「もうキライじゃないんじゃない?」
人の心を読むように、ユメちゃんがとどめの言葉を放った。
…………確かに。



