やっとの思いでゴールすると、加島くんはこっちを向いて真顔で訊いた。
「今の全力?」
ムゥ……。
それから、ちょっと走っただけでゼイゼイと息があがってるわたしを見て「うーむ」とうなる。
だからヤダって言ったんじゃん!
どうせバカにするんでしょ?
山ほどダメ出しを食らうんだと思って下を向いて待っていると、グイッと腕をつかまれた。
ヒッ……!
「腕はこうなんだ」
つかんだ手はわたしの右腕に添えられ、加島くんはそれをクイクイと振り子みたいに動かす。
「肩は動かさないで、ここをこう支点にするようにして」
反対側の手をわたしの肩に置いて説明しながら、中腰になってこっちを見あげる。
「わかる?」
黒い瞳で真っ直ぐに見つめられた。
わわ、近いよ……!



