「んじゃ走ってみて」
トコトコと彼のあとをついていったら、突然そう命じられた。
消えかけた白線がトラックの中に残っていて、そのコースを走るらしい。
「向こうで待ってるから」
「あ、うん」
「ここがスタートラインね」
加島くんがシューズのつま先でザッと線を引いた。
うちの学校のトラックは半周が100mなので、まずはその半周を試してみようってことらしい。
地面に引かれた線の前に立つ。
つま先をそのラインに合わせてトラックの向こう側に目をやると、もうそっちに着いている加島くんが大きく片手をあげた。
スタート……!
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。
思いっきり地面を蹴る。
ハッ、ハッ、ハッ、ハッ。
い、息が苦しい……!



