次の瞬間――
加島くんの手がボタンから離れて
その手はギュッと、わたしを抱きしめた。
え……。
髪も、肩も、背中も、腰も、
全部学生服の腕の中に閉じ込められる。
か……かしま、くん?
「紗百……」
耳元に加島くんの息がかかった。
は、初めてだ……、名前で呼ばれるのは。
「泣かなくていいから」
そう言って包み込まれた加島くんの腕の中で、時間だけが静かに流れていく。
ドキドキドキドキ……。
ちがうちがう、ちゃんと聞いてもらわなきゃ。
ユメちゃんが言ったみたいに2人で話し合わなきゃ。
そう思うのに、想定外の状況に心臓が飛び出しそうで、現実から意識が遠のいていく――。
ただ腕だけを夢中で伸ばして彼の背中にまわし、学生服の背中をギュウッとつかんだ。
授業の始まりを告げるチャイムが遠くに聞こえていた。



