キミの風を感じて


思わず見あげた顔は目の前30センチぐらいのところにあって、変わらない真っ直ぐな目がわたしを見つめていた。




「ひぇ、ゴメン。あ、ありがとう」


あわてて体を離そうとしたとき、髪の毛がギュッと引っぱられて「イタタッ」と声をあげた。


加島くんの学生服のボタンに、おろした髪が引っかかっちゃってるんだ。




「わわ、ゴメンね、すぐにはずすから」


あわてて加島くんのほうへと向き直り、引っかかった髪をはずそうとするけれど、絡まっちゃってほどけない。




「いいよ、ゆっくりで」


落ち着いた声でそう言った彼の吐息が額にかかった。




うわ……近すぎる。


コツンと彼の肩におでこが当たりそう。




もう顔を見あげることはできなくて、ただひたすらうつむいて、ボタンに絡まった髪をほどいていた。



なのに細くてくせ毛のわたしの髪は全然言うことを聞いてくれない。