少し前傾気味にタタタッてリズミカルにのぼってくる頭が、スッと上を向いて、今加島くんはわたしを認識したはずだ。
先に目をそらしちゃったから、よくはわからないけど。
タン、タン……。
リズミカルな音が一変して、足音がゆっくりと一歩ずつのぼってくる。
たぶん、もうすぐすれ違う。
加島くんはどんな顔をしているの?
うつむいて目を合わせようともしないわたしを
どう思ってる?
そのとき上から騒がしい声がして、男子が数人ふざけ合いながら階段を駆け下りて来た。
ドンッとひとりの体が肩に当たり、『キャッ』と足を踏みはずしそうになる。
「危ないっ」
加島くんの手が伸びてきて、グッとわたしを支えてくれた。
「大丈夫?」
「あ、うん」



