「じゃあ、俺が吉崎に訊いてみるよ」
「え、直接?」
「うん。ちょうど相談したい話もあるし」
「相談って?」
「いや、別に……」
放課後、部活に行く前職員室に立ち寄ると、顧問の吉崎はちょうど出かけるところだった。
「話したいことがあって……」
俺がそう言うと、「ほー、めずらしいな」と顧問はゆるい声を出した。
「すまん。今から用事で出かけなきゃなんないから明日でもいいか?」
明日の午後は担当の授業がないから、ひとり数学教務室にこもって事務仕事を片付けるらしい。
「昼休みにでも顔出せよ」
「はい」
うなずく俺の肩にポンと手を置いてから、吉崎は去っていった。



