そして――
ライブ中何度も高梨くんと目が合った。
何フレーズか、ずっとわたしを見つめたまま演奏してくれたりもして
もちろんそんな経験初めてだし、すっごくドキドキしたよ。
普段からイケメンだけど、ステージ上の高梨くんは5割増しぐらいにカッコよくって、思わずクラクラきたりして。
だけど……
この熱気の中でわたしの意識はやっぱり、まだここへ着いていない人のもとへと走っていた。
加島くん遅れちゃって、
今あわてて向ってくれてるんじゃないかとか、
チケットなくして場所がわからないんじゃないかとか、
道に迷って困ってるんじゃないかとか……。
メールや電話も気にしていたけれど、結局、加島くんからの連絡はないまま、ライブは終わった。



