キミの風を感じて


コースアウトし、立ち止まって手足をブラブラさせた。


「おい、どうした、加島」


コーチの声が飛ぶ。


「すみません。すぐ戻ります」




深呼吸してピョンピョン跳んだら、立木さんのポニーテールを思い出した。


ピョンピョコ跳ねる柔らかそうな髪――。




がんばれよな、俺。




目をつぶって息を吐き出したら、肩の力が抜けていく気がした。






そうこうしながら何とか初日の練習を終えて、俺はひとりで歩いて宿舎に戻った。


もらってた部屋割り表によると、宿舎は2人部屋。


俺は斉木一哉って同学年のやつと同室だった。




俺と斉木と、それからもう一人宮本基ってやつがいて、その3人が去年一緒にテレビ番組で特集されたメンバーだ。


といっても実際に2人に会うのは今日が初めてで、グランドでは斉木も宮本も常連のやつら同士で固まっていたから、言葉を交わすことはなかったけれど。