「あー、緊張してきちゃった」


入場門に集まってくる顔ぶれを見ると、確実に気後れしてくる。




「うそつけ。さっき立木さんの手、すげーあったかかったぞ。寝てんのかと思った」


クスッと吹きだす加島くん。


「ね、寝てないよ!」




けど――


ちゃんと走れるのかな?


去年みたいにやらかしちゃったらどうしよう?
みんなの努力を無にしてしまったらどうしよう?


心臓がドキドキと高鳴りだした。




「大丈夫だよ」


加島くんが真っ直ぐにそう言った。




「レースは水ものだから、何が起こっても気にするな。いつものように、ただ一生懸命、俺のところまで走っておいで」




「う……ん」


いつになくはっきりとストレートな言葉。
ホントの王子様みたいだ。




「何があっても俺、立木さんが駆け込んで来るのを待ってるから」


「うん……!」




何があっても加島くんの元へと駆け抜けるだけ……。