『マジで背負うか?』

本気でそう思ったが、頭に過るものがあった。

そういや、スクラップするにも確か金が掛るはず。

イヤ、その前に、この自販機を弁償しなけりゃならない。

国民年金と、ボロアパートの家賃収入と、この自販機の売り上げだけが生活費なんだと、この自販機の持ち主である八十過ぎのここの婆さんが言っていた。

この飲み屋街の一角に立つ古い自販機。

飲んだくれていても煙草だけは吸いたがるオヤジが群がる。

その収入はバカに出来ないと、入れ歯が飛ぶ勢いで話し込まれた記憶がある。

背負い投げしてスクラップにしてしまえば、その入れ歯そのものが飛んでくるのは必至。

賠償金の発生も免れない。

おまけに初代婆さんの生き霊に呪い殺されるかも知れない。

ペナルティが大き過ぎる。