バーテンダー


ぶつかった場所が助手席じゃなくて良かった。


助手席なら、美弥子が怪我をしていたかも知れない。


取りあえず、ドアを開けて車から下りようとすると、追突してきた車から血相を変えた六十代くらいのオバサンが、走り寄って来て
「あなた、なんてことしてくれたのよ。これって当て逃げじゃないの!」


「当て逃げ?」


「当てて逃げようとしたんじゃないの?」


「イエ、直ぐに停まりましたけど」


「この車、どうしてくれるのよ」


オバサンが自分の車に走り寄って、凹んだ車のフロント部分を叩いた。


ヘッドライトが割れ破片がアスファルトに飛び散り、バンパーもグシャリと割れボディから外れかけていた。


「ねえ。これって華子が悪いの?」
美弥子が心配顔で話しかけてくる。


「イヤ……わたしが悪いのかな? 取りあえず、保険の代理店に電話する」


喚き散らしているオバサンを無視して、損害保険の加入をしている代理店へと電話を掛けた。


暫くして、お互いの保険屋さん同士の話し合いになった。


公道を走っていたわたし。


自宅車庫から出て来たオバサン。


当然、公道側が優先され、前方左右確認不十分のまま車を発進させたオバサンに非があるわけで……


双方の保険屋さんからそう言われて、一変したオバサンが


「ごめんなさいね」
と泣いて謝って来た。