カウンターの端で、グラスを拭いていたマスターがヤレヤレと言った表情で、大きく頷きながら
「リオ。稼いでくれるんなら、こっちはいつでもOKだ。その代り、羽目を外し過ぎるんじゃないぞ」
「人聞きワリいマスターだな。いや、さすがマイスターだ。マイスターのカクテル飲んで、舞い上がっちまったよ」
「褒めても何も出ないぞ」
照れたように二コリと笑う。
まるで、孫に笑い掛けるように。
リオと呼ばれた男は人の笑顔を引き出すのが上手だ。
幾つものシルバーカップをクルクル回しては放り投げ、音も立てずにカウンターに並べていく。
タモツのやっていたバーテンダーとはまた違うダンス的なもの。
溶けた氷の雫がキラキラと飛沫を上げてリオの周りに飛び散る。
「フレアバ―テンディングって見たことない?」
「無いです」
そう言うと、また、ボケた振りして、カクンと膝を曲げズッコケル。
カッコイイのか、オトボケさんなのか、よく分からないリオと呼ばれたこの男。
カウンター内のスポットライトに金色の絹糸が光り輝き、瞳はアメジストのように高貴な光と放つ。
この場はバ―カウンターではなく、リオが言ったようにステージになった。

