「わ……分かってます。そうなることくらい……分かってます」
「それにさ、あいつ。同じ女は二度と抱かないぜ」
「えっ?」
「俺、あいつと古い付き合いだけど、そんなヤツなの。絶対同じ女は抱かな
い……俺だけは別だけど」
「はあ?」
「ウソウソこれは冗談だけどさ。そんなヤツに抱かれて、あんた、これからどうすんの?あれ以上の男捜して、あちこち彷徨うことになるよ」
「もう……いいんです。わたしなんか、どうなってもいいんです。落ちるとこまで落ちたい」
「あのさ、お姉さん。今、酒に酔って、辛いことばかり思い出して、テンション海底彷徨っている状態だから、ちょっとテンション上げてもう一回よく、考えてみたら? あいつとのこと」
「こんな状態で……テンションなんか上がりません。放っておいて下さい。今夜はあの人に溺れたいんです」
すると、急にイケメン男に変貌した痛い中年がわたしの肩をポンポンと叩いて
「あいつに溺れたら、もう、二度と這い上がれないよ。俺が今からお姉さんのテンション上げてやるから」
そう言いながら、着ていたブラウスの袖を捲りあげながら、カウンター内に入って行った。
「マスター。ステージ借りるよ」
そう言ってカウンターに置いてあったボトルを一本、手にして空中に放り投げ片手でキャッチした。
まるで、サーカスのピエロか大道芸人のように。

