スラリと伸びたタモツの背中を眼で追っていると、隣の金髪中年男がわたしの隣の席へと移動して来た。
「ねえ。お姉さん」
そう言いながら、少し曲がった眼鏡を外して、無造作に括っていた髪を解いた。
シャラリと鳴り響いたその長い髪の毛は、まるで金糸のような音を立てた。
染め上げている思っていたその髪は自毛のようで、地肌からその毛先まで、見たことのない輝きを見せていた。
「俺のこと、痛い中年とか思ってたでしょ?」
素直にコクリと頷いた。
ブルガリブラックの香りが仄かに香る。
そして、こちらに向けられた目の色に衝撃を受けた。
まるで、岩肌に咲く可憐な菫のような色合いをしていたのだ。
「カラコンですか?」
カウンターに付いていた肘をカクリと落として、ボケて見せた。
「んなはずないじゃない。こんな色のカラコン見たことある?」
「無いです。ハーフですか?」
「ううん。クオーター。まっ俺のことはどうでもいいんだけど、お姉さんさ……あいつと寝たら、忘れられなくなるよ。マジで……」
そう言いながら、タモツが消えたスタッフルームの方に親指をクイクイ向ける。

