バーテンダー


「華子さん、よく、このバ―まで辿り着いてくれました。今夜ほど、ここのバーテンダーに転職して良かったと思う夜はありませんよ。僕はこのままあなたを放っておけないです」


タモツの言葉を聞いて、恥ずかし気もなく、ゴクリと唾を飲み込んでしまった。


まるで、豪華な御馳走が眼の前に並べられたように、ゴクリと唾を飲み込んだまま、顔を上げた。


月光に照らされた夜の湖のように澄んだタモツの瞳と見詰め合った。


深く深く、何もかも沈み込んでしまいそうな、柔らかな光を帯びているその瞳から目を逸らせなかった。


「華子さん。今夜、あなたをさらっていいですか?」


コクリと頷いて、もう一度その胸に顔を埋めた。


エタ二ティーフォ-メンが仄かに香る。


この香りに覚えがあった。


この香りに包まれた眠った記憶が鮮明に思い出された。


そう……たった三カ月間だけ付き合ったあの男と同じ匂いだった。


あの時、わたしに結婚してくれと申しこんできた男をこんな時に思い出すなんて……


あの三人に裏切られて、心の隅に追いやっていた後悔と言う文字。