バーテンダー

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「このまま、泣いていいですよ」


上品なシトラスの香りが鼻孔をくすぐる。


エタ二ティー?


カウンター越しに身を乗り出して来た、タモツに抱きしめられていた。


タモツの温かく、厚い胸元の中で、言われるままゆっくりと眼を閉じた。


「ウッウッウッ……。女は……優しい振りして……気を使った振りして……それが相手を傷付けるなんて……ヒックヒック……微塵も思って無いのよ……ヒッヒッヒック」


さっきまで器用にシェーカーを振っていた細くて長い指で、わたしの髪の毛を梳くように撫でてくれた。


厭らしくもなく、優しく過ぎるでもなく、押し付けるわけでもなく……
どう言えばいいんだろう。


つまり、先ほどと同じ、絶妙。


たったそれだけなのに、体中にビリビリと電流が走ったように思えた。


そのお陰で、嗚咽が出るほど泣いていたわたしの涙がピタリと止まった。


夜の世界を華やかに生き抜いていた男の神のなせる業なのだろうか?