大学時代のバイト先の居酒屋チェーン店で、卒業後も正社員として今でも辞めずに働き続けている保奈美が、余裕の笑みを浮かべている。
もしや……
今、わたしが顔を上げて、三人を見渡すと、そのタイミングがやってくるのではないだろうか?
そう、余裕の笑みを浮かべることの出来る近況を、カミングアウトするタイミングが……
膝の上に置いていた握り拳をジッと見つめ、このまま気を失おうかと思った。
大げさにこの、座り心地のいいソファから転げ落ちて、飲み過ぎで気を失った振りを……
こんな大人数の前で、そのような演技をやってのけることが出来るだろうか?
地味に生きて来た三十女は人一倍人目を気にするんだ。
そんな勇気さえなく、まるで、能でも舞っているような天然能面を貼り付けたまま、口を開いた。
「タマヨ……スッゴクステキダッタ。ナニカ、イイコトデモアッタ?」
「えっ? 分かる? 華子!」
し……
白々しい……
危うく舌打ちしそうだった。

