演奏が終わると同時に、その二十代の女性が、ピアノの前でわたしたちのテーブル席の方を向いて珠代を手招きし、ピアノを指差した。
「もう。あの子、わたしに演奏しろって言ってるみたい」
珠代がカクテルグラスを口に付けながらそう、呟く。
「いいじゃない。珠代の演奏聞きたい」
珠代の隣にいたわたしは、そう言って珠代に立ち上がれと促した。
「わたしも聞きたい。ここにいるみんなの為に弾いてよ」
「そうそう。みんなのお祝いも込めてさ」
大学時代より、確実に十キロ太った由美子が、意味有り気な言葉を吐いた。
顔が反射的にヒクリとした。
みんなのお祝い?
どう言うこと?

