正直ブレザーの着方なんて分からない
どうやって着こなすのがイケているのか。
何度もお風呂の全身鏡で確認した。

「あーかーりー!陽向ちゃんが待ってるから早くしなさい。」

母は人を待たせるのが嫌いなのだ。
私も嫌いなのだが、母は特に許さない。
アイロンで髪を整える最終段階を終え、重いジャケットを羽織って小走りで外に出た。

正直、入学式なんて行きたくない。
中学の時はほとんど知り合いだったけど、高校となってはそうはいかない。
陽向が数少ない同じ中学でかつ同じ高校に入学する友達だった。

人見知りだ。


「ひなー!ごめん。待たせたね。あんたブレザー超似合わねー!!」

陽向の広い肩をバシバシと叩いた。
こいつは女のわりに妙にがたいが良い。

「うるせー!朱莉だってちょっと不自然だぞ」
「あたりまえだろ」

二人とも妙な緊張感により、いつも以上にお互いをけなす。
近所に幼い子供がいなくなり、草で覆われてしまった公園の桜は、この年になっても可愛く、こじんまりと、それであって立派に咲いている。

家から見える公園の桜に「いってきます」とつぶやき、車に乗った。



緊張と不安と、そして期待を二人も乗せた車は、見慣れない道を淡々と走って行った。
何かが始まるのだ