「あら、そう?」
「そうだよ、僕はもう大人に近づいてきるんだからさ!」
眉を釣り上げながら、突き刺したイチゴを
大きな口を開け頬張る。
釣り上げたはずの眉と、
への字に硬く結んだはずの唇は
いとも簡単に緩みそうになったのは、
内緒にしておこう。
………絶対、子ども扱いされちゃう。
「そうだな、真も大人になろうとしてるんだもんな。………真、今から話す大人な話し、聞いてくれるか?」
そう言って、ケーキのスポンジを
綺麗に一口サイズにフォークで切りながら
笑顔でこちらに向いている。
いつもの落ち着いた声で
にこやかに話すのに、目だけは真剣だ。
「……何?」
僕は少し身構えながら、フォークを置く。
こんなにも真剣な目をするお父さんは
初めて見たからだ。
僕、何か悪いことでもしたかな?
………思い返してはみたが、
思い当たることが多すぎて分からない。
友達と喧嘩して泣かせたこと?
自転車を2人乗りしたこと?
それとも、宿題をせず学校にも行かず
遊んじゃったこと?
どうしよう、分からない。
