オレンジ



「あたしもねぇ、あんたらみたいな男のひとがいてさ?
まぁ何年も前の話なんだけど。今さら気にしてもないけどさ。
ときどき、会いたくなるの。昔の恋に後悔してるのよ」



何年も前って、ねーちゃん何歳だっけ。

ねーちゃんに、俺らみたいな関係の異性いたっけ。



「ふぅん」


「くぉら!つっこむところたくさんでしょ!!」



首根っこをつかまれて、ねーちゃんと向き合わされる。


酔っているのかと思うくらい、ねーちゃんの顔が赤い。




「ねーちゃん、だいじょぶ?」


「…あたし、後悔してるのよ」


「後、悔」



「あのひとの、あの手をはなしてしまったこと。
もう戻ってこない過去に、あたしは何度後悔したんだろ……」




過去は戻らない。


後悔したって、どうにもならない。


だから、後悔しないように生きなきゃいけない。






ねーちゃんには、かける言葉も見つからない。


黙ってる俺の肩をねーちゃんはたたいた。