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「ただいまー」
「おかえり…」
小さく返事をして、俺はベッドにうつ伏せた。
もし、さ。
俺も母さんも父さんも、誰も家にいなくて、
『おかえり』って声が誰からも返ってこなくて。
『ただいま』って言ったねーちゃんの気持ちはどうだろう。
留守で、誰も家にいないと思うのか。
なにかあったと思うのか。
ただ聞こえてなかっただけだと思うのか。
『おかえり』の声がない家にえーりは毎日帰る。
えーりはもうそれに慣れてしまっている。
えーりには、誰がいるだろう。
母さんも父さんも、えーりが寝ている時にしか帰って来ないのだ。
えーりには俺しかいなかったように思える。
自惚れだって、わかってるけど…。

