オレンジ



「とくに…。別に」


そーだ。

どうして俺はえーりと今話しているのだ。


組んでいた腕を誤解されまいために、猫娘に先に行かせて。



「あたしに近づかないんじゃなかったの?」



近づかないって、決めたはずなのに。


えーりの好きなひとのために、えーりの、ためにも…。



「そうだ…


「えーりちゃんっ!」



俺の声は、誰かの声に打ち消された。


えーりを呼んだ声の主は、俺たちの前で止まった。



「えーりちゃんっ」

「おはよう」


えーりがその男に笑顔を見せた。







嗚呼。きっと。



「えーりちゃんが遅いから迎えにきちった☆」


「ごめんね。寝坊しちゃって」



えーりの好きなやつはこいつだ。