相手を確認してから、抱きしめられるようにして立っている姿勢に気づき、慌てて体を離す。
「だ、大丈夫だよ、ありがとう」
不安定な足元に視線を落としながら、もごもごと言うと、小さく笑うのが聞こえた。
「待ってて良かった」
後頭部にぽん、と添えられた大きな手。
「こんなことになるだろうと思ったんだ」

待ってたの? …それって…

「舞ちゃん!」
明るい声が横から飛んで来て、優しい重みがサッと消えた。
駆け寄って来たのは、私の彼氏。
「啓太くん」
「ごめんね、遅れちゃって。あ、浴衣だし!めっちゃカワイイ!」
「ありがとう」

こんな風に褒められたくて、買ったはずなのに。

なぜか、あまり嬉しくない。