「いや__」



 瞬間、仲人の笑顔が凍る。そんなことも気にせずに、僕の口は綺麗な嘘をつくことを拒み続ける。



「……僕は、料理が出来なくて、掃除も洗濯も出来なくて……だから、部屋なんて、プリントや衣服だらけで……でも、仕事は出世頭で、責任の重さにたまに疲れてお酒を飲んで……。たまに我が儘で……。何より、僕の料理を喜んで食べてくれる……そんな女性が、一番素敵だと思います」



「え……」



 しまった、と思った。これでは……ぶち壊しどころか、世間知らずだ。



 最後に断ろうと思っていたのに……。



 周りの、ぽかんとした表情に、気まずさが募っていく……。