鍵を受け取った彼女の足下をふと見れば、ヒール。



 この人はヒールで走ろうとしていたのか……。注意して見ていてよかった。



 家の鍵を閉めて車に向かうと、姿勢良く助手席に座っている彼女が見えた。



 運転席に乗り込めば「よろしくお願いします」なんて申し訳なさそうに言われた。



「水島さんの家って、僕の家と近いっていうのは知っているんですけど、どっちの方向ですか?」