エレベーターを降り、エントランスを抜けて地下駐車場へ。 彼の愛車はフォルクスワーゲンのクロスポロ。 さりげなく、助手席に回ってドアを開けてくれたりするところに、彼は大人なのだと感じる。 「あ、ありがと……」 どもる私を見て、涼くんが微笑んだ。 彼の車に乗せてもらうのは、これで4回目か5回目くらいだろうか。 私は助手席に乗るたびにドキドキと落ち着かない時を過ごす。 今日もそう。 私は胸の辺りまで伸ばした、くるんとしたくせ毛の黒髪を撫で付けるように触った。