引越しをしてから初めて入った浅緋の部屋は、殺風景でお洒落な家具などは置いてなくて、だだっ広い。
だけどその中で一際この目にとまるのは、部屋の真中にドーンと置かれた描きかけの大きなキャンバス。その中にはこれでもかってぐらいの色が溢れている。
キャンバスを今にもはみ出そうとしているその素晴らしい躍動感に、私は胸打たれ涙が零れた。
この場所が殺風景なのは、欲しいものの全ては浅緋の中にあるから。
貴方の情熱は限りなく、いろんなものを貴方は作りだせ、見る物に感動を与える。
貴方のシャツだけを纏い、絵を見つめる私に寄りそう、貴方。
「リコ、どうした?」
「感動しちゃった」
私の肩を抱き寄せ、私の唇に触れる貴方の唇・・・
「俺の部屋へようこそ!」
悪戯に微笑む、浅緋に恋焦がれた。


