アカイ花†Vermilion Flower


それからの私達は、昨夜の事など何も無かったように昼間は普通に生活を送りながら、夜になると熟年夫婦のように別々の寝床で眠りにつく。

決まった時刻が来ると、貴方は席を立ちこう言うの。


「時間だ
 
 リコ、おやすみ」


バタン・・・閉まるドア。


数日前までは、楽しい、嬉しい、幸せ、こんな気持ちで私の胸の中はいっぱいだったのに、今は苦しい・・・切ない・・・悲しい、そんな気持ちしか無い。

それなのに、ここに居る意味が分からない。


わからない・・・

脱衣所の鏡の前に立つ、私。


私ってば、なんて疲れた顔をしているの・・・

目の下には隈ができ、肌なんて全くハリが無い。


唯ひとつ


綺麗なのは、いずるさんに手入れされたこの黒髪だけ。

艶めいて、写真に映る彼女の髪みたい。


もう、何もかもどうでもいい・・・