津村の声は聞こえない。 田崎さんがまた続けて言葉を発した。 「康介、大丈夫?」 ……コウスケ。 それは津村の名前。 だけど何か違う。何かが私の中で引っ掛かっている。 するとやっと津村の声が聞こえてきた。 「千尋のことは、もう平気だ。」 チヒロ? 津村は今、確かに『チヒロ』と言った。 私の頭の中でぐるぐると吐き気を覚えるくらいの過去が廻る。 それは姉に関する記憶。