しまった。 私は気付かれないように静かに踵を返そうとした。 「…やっぱりちぃの妹だったのね。」 聞こえてきたこの言葉が私を引き止めた。 “ちぃの妹”? 気になった私はそろりと壁から覗く。そこに居たのは津村。そして田崎さんだった。 「顔も瓜二つだし、苗字も同じだからまさかとは思ってたけど。」 心臓の音が聞こえてしまうのではないかと思った。 もしかして田崎さんは、お姉ちゃんを知っている? 壁に背をもたせかけ、さりげない風を装って二人の会話を聞く。