津村は、んん、と唸ると少し首を傾げて見せた。


「好きだったと思う。理解することで紛らわせていたけど。」


理解。
それはきっと姉とはもう会えないという事を。
辛い辛い、現実を。


「千尋は俺にとって完璧な恋人だったな。みんなが羨んだ。」


ハンドルの淵を指でなぞる津村。少しだけ胸が痛かった。


「けど俺が好きだったのは、千尋の持つ雰囲気や空気だった。千尋の包み込むような愛が、俺には心地良かったんだ。」


分かるような気がする。
姉はいつだって穏やかで、優しい雰囲気を持っていた。