「ごめん、美菜…盗み聞きするつもりはなかったんだけど…聞いちゃった…甲斐君と二人で話してたの…」

「……うん…」

「……ほら、おいで。一日だけ、私の胸を貸してあげる」




手で顔を覆い、近づく美菜を郁は優しく抱き締めた。

小さな嗚咽は花火の音でかき消され、美菜の心を表しているかのように花火は散っていく。

祭りを楽しむ人々の声も、今の美菜には雑音にしか聞こえず、心には何も感じることはなかった。



失恋。



美菜の恋心はこの日、終わりを迎えた。