白い廊下を通り、土間に出るとコンクリートの通路を渡る。
その先にある食堂、広場に自動販売機はある。

その自動販売機の前で甲斐の足は止まった。




「美菜、どれがいい?」

「え、え?どういうこと?」

「おごってやるよ」

「いや、いいよ。払うし…」

「いいって。顔、いまだに赤いの分かってる?ほら、遠慮しない。どれ?」

「え…あ、あぁ…じゃぁ、イチゴミルク」

「はいはい」




お金を入れた自動販売機にあるイチゴミルクのボタンを押すと、甲斐は出てきた商品を美菜に渡した。
水滴を帯びたパッケージから冷たさが手に伝わってくる。

美菜はストローを差すとイチゴミルクを一口飲み込んだ。




「あ、いただいてます」

「いえいえ、どうぞ」




終業式が終わり、夏休みが始まった校内は、いつもと違う学校の雰囲気が感じられる。
いつもなら何気なくいる生徒たちもおらず、広場には甲斐と美菜の二人だけだった。




「しかし、イチゴミルクって…この暑いのに、逆に喉乾かないか?」

「いやいや、おいしいよ。暑さは関係ない」

「はいはい、そうですか」




徐々に会話が少なくなり、ついには沈黙が流れる中、イチゴミルクは順調に量を減らしていく。

段々と軽くなっていくイチゴミルクの入れ物に、美菜は甲斐との時間に終わりが近いことを感じた。




「ねぇ、甲斐」

「ん?」




続けたい会話。
続けたい時間。

美菜はふいに甲斐に質問をした。




「甲斐は進路、どうするの?」

「進路、かぁ。確かに、俺ら受験生だったな」

「そうだよ。夏期講習とか行くの?」

「あぁ、まあな。美菜も?」

「うん。私は夏期だけじゃないけど…」

「?どういうこと?」

「予備校もね。実は春から行ってたりする…」

「はぁっ!?ウソだろ??」