外はいつの間にか夕日が差し、空はオレンジ色に染まっている。
差しこむ日差しもオレンジ色になり、照らされた沙紀の姿が甲斐の瞳には、いつもと違う雰囲気に映った。




「な、何?甲斐…」

「えっ!?あ、あぁ、別に…」




視線を感じた沙紀が恥ずかしそうに甲斐に声を掛け、それに驚いた甲斐は突如視線を逸らした。




「か、甲斐…」

「な、何?」

「あのね…」

「うん」

「今日、よかったら一緒に帰らない…かな…?」

「え…?」




今まで委員会で二人が最後まで残ることはたくさんあった。それまで他愛のない話をして、普通に挨拶をして帰路に着く。
けれど、今日は違う。
沙紀の顔は赤く染まり、緊張をしているのか、目が潤んでいる。

甲斐は、自分の中にある沙紀のイメージと今目の前にいる沙紀が違い、驚きながら沙紀を見つめていた。




「だ、ダメ…かな…」

「あ、ううん。いいよ」

「え!?ホント!?」

「え?あぁ、うん…」




甲斐は自分の答えに首を傾げた。
別に一緒に帰ることが嫌なわけじゃない。

ただ、断ることができなかった。


嬉しいのか、沙紀は甲斐の手を握り微笑んだ。


甲斐はその手を握り返す。


そして片付けを終えた甲斐と沙紀は、同じ速度で歩き、帰路を共にした。
オレンジ色に染まった景色の中、二人の黒い影が長く映し出される。

時に離れ、そして再び隣に並ぶ。


そうして時を重ねていき、甲斐と沙紀が二人一緒に帰ることが多くなっていった。