「それ、は……」
説明するべきか、しないべきか。
思い出したくない記憶を無理に思い出したところで、きっと何も変わらない。
言葉を詰まらせていると、綾は冷たい声でさらに畳み掛けてくる。
『馨、だっけ?あの子に聞けばいい?』
「っ、それはだめっ!」
綾の言葉に思わず叫んでしまった。
綾は、俺の叫びにビクッと肩を震わせた。
「あ、ごめん…。馨には、話させちゃだめなんだよ…」
慌てて謝り、もう一度ダメだと伝える。
『……じゃあ、柚はあたしに話してくれるの?』
眉間に皺は寄ったままだけど、声を微かに震わせて尋ねてきた。
…綾は前に、俺に昔の自分のことを話してくれた。
それならば、俺も言うべきだ。
「…わかった。ちゃんと話す」

