「『え…?』」
彼と俺の声が重なった。
馨はどう言った意味でその言葉を言ったんだろう。
『柚』
「っ、何?」
『ーーー安西君は、今、雪と付き合ってるんだ』
……何も言えなかった。
『そっか』って一言そう言えばよかったのに、それすらも言えなかった。
名前が出てきただけで動揺したのに。
『あなたが、雪の…』
「っ、あや、行こう」
安西君とやらが、馨がこれ以上何かを言う前に離れなくちゃ。
そう思って綾の手を掴み、昇降口へと向かった。
その時の綾の顔は、不安というか何というか、複雑な表情をしていた。
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