男性は私に向かって手を差し伸べる。
どのクラスでも汗をかきながら授業をしているのがよくわかる。

何かに後押しされたように
大きな男性の手と私の少し小さな手が重なった。
少しドキドキする勝手な自分の期待で胸の鼓動が激しくなった。

『ー…もう昼休み終了してますよ⁈』私は大きな声で言った。
自分でも驚いたほどに。
というか、自分が1番驚いた。
「まぁいいじゃんっ!授業なんて!」
男性はそう言う。
「でっ、お願いってのは…はい!」
そう言い男性は私に字がぎっしりと詰まった紙を渡した。
『え…これをどうしろと…』
「まあまあいいだろっ」
男性は私の言葉をあっさりと受け流し、何処かに行ってしまった。

私はその場で紙に書かれた文章を
少しだけ読む。
『何これ…』
知らないうちに1人で呟いていた。
男性が書いたような字があった。
【これっ、13時から読み上げてね。君が。笹木夏樹。】

ふと近くにある時計を見る。
時刻は12時56分を指している。
『あーっ‼やばいやばいっ‼』
外に響き渡るくらいの声で叫んだ。
そして私は汗をかきながら
仕方なく放送室へ駆けて向かった。