*お向かい彼氏*








「待って!」





立ち上がって、2人の間を引き裂くようにひかるの腕を掴んだ。




やっぱり無理。




他のオトコと一緒にいる姿見ても





諦めるなんて無理。






「な、なに…、」



「話す時間が欲しい。」




目を泳がせるひかるに、隣のやつが言った。



「……行って来いよ。」






なにそれ、彼氏の余裕…?




勝算なんてゼロなくせに、いっちょまえに嫉妬だけはする俺の心。







なぁひかる。



ひかるだけしか見てないって、何度だって証明するから。



また俺だけを見てくれるまで、どんなに辛くても努力するから。







もう一回だけ、傍にいて欲しい。











「…わかった。」






渋々頷いたひかるに少しだけホッとする。






八田に断りもせずに、2人で店の外へ出た。








柔らかい、懐かしいひかるの手のひらの感触…





無性に、泣きそうになった。







「…ひかる、八田とはただ会社が一緒なだけだから。今日もたまたま飲みに来ただけ。」





「…あたしには関係無いよ。」






突き放されて、また胸が刺されたように痛む。






そうだよな、ひかるにはもう関係ない…。





「…なぁひかる。俺、ひかると別れてから息も出来なかった。」






「………。」