ー巧side
ひかるの残り香が鼻をくすぐる。
…今俺は泣いてるみたいだ。
ベッドにはまだ温もりが残っているというのに
もう二度とひかるはこの部屋には来ない。
どこで間違えたのか…
ゆっくり、ゆっくり好きになってくれればいいと思ってた。
俺があいつの分まで愛してやればいいと。
何倍にも膨らんだ愛で包んでやればいいと思ったのにー…
…いや、最初から間違いだったのか。
弱っているあいつに
つけ込もうとしていたのかもしれない。
初めて抱いたあの日も
このまま俺以外見えなくなればいいと
壊してしまいそうだった…。
目をつぶっても浮かぶのは彼女の笑顔。
少しずつ見せてくれた笑顔も、偽物だったのかな。
『巧っ!』
そう呼ぶキミの声が
遠くて遠くて仕方ない。