古びて錆びたドアは重くて、冷たい。 触りたくないようなくらい汚いドアを押し開け、屋上に出る。 さっきよりも強く降り付けた雨が、私の身体も包んでいく。 「聖菜ーッ!聖菜ーッッ」 屋上に降る雨の音に掻き消されないように、声を張り上げる。 でも、どこにも聖菜はいなかった。 屋上の柵を超えて下を見渡しても、どこにも聖菜はいなかった。 それなのに、どこかまだ胸に残るモヤ。 それは、そのモヤの意味はすぐにわかった。