音を立てないようにそっと

私はセイちゃん達の部屋を出て

一瞬ぎくりとするほどギシギシと鳴る

木製の廊下と階段を忍び足で歩き

一階へと降りていった。



記憶が飛んで、ここへ来て

それから一度も外に出ていない。

少し、外の空気でも吸いに行こうと
思った。


薄暗い廊下の向こう、オレンジ色の

明かりが灯り、小さな水音が聞こえた。

セイちゃんが教えてくれた水道がある辺りだ。

人が動かす、空気の気配。

私はゆっくり水音の方へと近づいて行った。


「あれっ?どしたの?」


覗き込むようにして、いきなり現れるから

私は思わず声を上げそうになった。


咄嗟に私の口を大きな手がふさいだ。


「ごめん、ごめん」


ヘアバンドで前髪を上げて首に

タオルを巻いた笑窪。


・・・・・・カオル君。