アンテナの立っていない携帯を開くと

時間はなんと夜中の二時過ぎだった。

「もう遅いから今日も泊まってきなよ」

カオル君の言葉に

またしても心臓が脈打った。

「そうしなよ!セイの部屋おいでよマキちゃん!」

「あ、・・・いいの?お邪魔しちゃって」

「全然いーよ♪沙織ちゃんはもう寝てるから

あんまり騒げないけどね」

薫クン、残念賞~!!

セイちゃんの冗談に、カオル君は

「ほんとだよ。なんでお前こんな時間に来るんだよ」

ほっぺを窪ませながらも、ちょっと真剣にカオル君は答えた。


「あ!」

セイちゃんと一緒にカオル君の部屋を出る時

突然思い出した。

あの、背の高い妙に落ち着いた同い年の男の子。

ユーイチ君の事。

「カオル君に頼まれたって言ってて、

私が起きるまでずっと待っててくれてたんだ。

お礼言わないと」

私がそう言うとカオル君は

「あー。祐市今はいないよ。新聞配達してるから。

帰って来るの朝の5時くらいだと思う」

意外な言葉を口にした。

「新聞配りながら

奨学金で学校行ってんだよあいつ。

俺らん中では一番真面目かもなー」


私が有美子に電話をかけた後。

ユーイチ君が既に自室に戻っていたのは、

朝方起きなくてはいけないから

寝るためだったんだという事がわかった。