「あの・・・
『あの子』って?」
思わず私は聞いてしまった。
彼女から二杯目の麦茶を
手渡されながら。
「へ?有美子よ有美子。
・・・もしかして真希ちゃん、
記憶飛んでる??」
はい、と私が
返事する余地もなく、
彼女はマッパで床にゴロリ。
寝転んで爆笑し始めた。
「マジでぇーーー!?
めっちゃウケるんだけど!!
てか、そしたら私の事も
忘れちゃってんの???」
「・・・はい。実は」
私の返事にまたしても
強い風に吹かれた風鈴みたいに
笑い出し、床を転がる彼女。
同性とは言え
目のやり場に、困る。
なんて無防備な姿で
笑ってるんだろ、この人。


