「カオルって・・・?」

私が問いかけると

男の子は、ふっと笑った。

笑うととたんに目元の冷たさが
柔らかく溶けた。

「それも覚えてないんだ。
なんかオロオロしてるから、
記憶飛んでるんだとは思ったけど」

「はぁ・・・」

「随分飲んだんだな、あんた」

「はぁ・・・」

なんと言われても、全てがまるで
なぞなぞのようだ。

今度は同じ高さの目線で
私達は見つめ合った。

耳元に、再び微かな電車の音が
響きだした。