「覚えてないの?」

聞いてもしょうがないけど、一応聞こうか。

「んー…んんんんんんー…と」

「あーもーいい!いいです、テツ君!」

「…すんません。記憶飛びました」

それはいつもの私のセリフだ。ああ、ほんと棚に上げまくりで申し訳ないけど

「…このアパートの住人は、全員悪酔いするタイプなわけ?」

つい鼻息が、荒くなる。

『ごめんなさい…』

沙織ちゃんもそう書いて、私とテツ君に冷えたミネラルウォーターのボトルを

手渡してくれた。

「まったくもう。いただきます!」

ぐびぐびぐび。今こそ酒が飲みたい気分だわ、私は。

今夜は有美子と飲もうかなぁ。…あ、ダメだ。明日は仕事だ。

がっくんとうな垂れた私の頭にテツ君の声が当たる。

「でも、ユーイチとカオルは飲まねーよ。な?沙織ちゃん」

顔を上げると、テツ君を見ながら、

またほっぺをピンクにした沙織ちゃんが頷いていた。

ユーイチ君。

さっきのセイちゃんのどさくさで一瞬忘れかけていた『告白』を思い出して

なぜだかギクリとする私。

「…ユーイチ君は仕事だからなんでしょ?」

「いやー。もともと飲まねーよ。カオルは…アレだけど…」

アレ?

言葉を濁らせたテツ君の隣でサラサラとペンを走らせる沙織ちゃん。

『お薬を飲んでるから、アルコールはダメなんです』

ああ…そういえば…