だって、だから、そんなこと言われても。

「私たち、会ったばっかりじゃない」

「カオルとだって同じだろ?」

…そりゃそうだけど…

カオル君にも聞きたいと思ってたこと、言ってみる。

「私の、どこがいーの?」

「……わかんねえ。けど、

俺だってわざわざ友達の好きな女好きになりたくなんか

なかったよ」

パッと私の両手首から手を外して、やっと解放してくれた。

「…仕事、行ってくるわ」

背中で、そう言って立ち上がった。

「…いってらっしゃい」

横たわったまま、なんだかマヌケだけど、私は言った。

そしてユーイチ君は、後ろを向いたまま、

タオルを頭にキュッと巻いてそのまま何も言わずに立ち去る…

かと思いきや。

起き上がりかけて油断していた私の頭、

つむじの辺りに突然キスをした。

「ぎゃーーーああああ!!!」

「うっるせーな…」

慌てて見上げると、柔らかな苦笑。

あの日、「あんた、なんにも覚えてないんだな」と言ったのと

同じ顔がそこにあった。